ロードインプレッション 記事 64年5月 月刊オートバイ  その2

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ロードインプレッション と定地テスト 1964/5 オートバイ
 
横内一馬  本誌専属テストライダー
 
以前に書いた記事の続きです。
 
重量車という名にたまらない魅力を感じ一度は乗ってみたいと憧れをもっている人—–そのような人には、このライラツクR-92500CCはうってつけの車といえよう。ずっしりとした手答え、重々しい排気音、身を置いて行かれるような強烈な加速力……たとえセンタースタンドは、一人で建てられなくても、税金が高く、車検の面倒はあるにしても、その迫力ある走行ぶりは走る楽しさを身に染みて感じさせられるからである。
 
回転数が3000以降の加速は静かで強力な立ち上がりを見せる。3000回転を格段の速度に見れば約ロー25、セカンド40、サード55、トップ70㎞/hとなる。このスピードを境にこの車の性格は、大きく変わるといっても過言ではないほどの威力を発揮する。
この車を持つもっとも能率よく走らせるには、ロー40、セカンド66、サード80でのチェンジタイミングがエンジンに対して無理のない範囲で早いつながりが得られる。
もし最も早い加速力が欲しいならそれぞれ50-80-100まで安心して使える。
 このようなダツシュを見せる一方20㎞/hからでも強力な加速をするという所に大排気量車の良さがあり、乗ったことのある人のみが味わい、理解できる魅力があるのである。見た目には大きくえぐられ挟み易そうに思われたダイナミックな燃料タンクも、いざ100㎞/hをオーバーする高速になると意外とニーグリップの位置が悪く上体が不安定になる。そりは大きくえぐられた塗装とメッキの境の角に膝が当たり肝心のニーグリップラバーの所に膝があたってくれない。この位置ではよほど臑の長い人でなくては無理ではないだろうか。
 また高速時に感じたことだが、このライラックR92型500CCの前後サスペーションは、柔らかすぎる感じであり相当アオリが見られた。舗装の浪打ちにも共振する傾向があり不安なおもいがあった。だがある程度ダンパーオイルの比率を変えることによって(標準はAE井30とスピンドル油を7対3の比率で混合し片側240CCリア45CC)多少の変更は可能である。
 スピードメーターは見やすいが目盛版の地が白のため光線状態によっては見難いこともあったしかし内部に組み込まれている積算距離計の100桁の5と0が黄色に着色されているのは、定期点検や給油の時期を自動的に知らせてくれる便利なアイデアである。
海外輸出モデルは、国内仕様と違いカッコ良いデザインに仕上がっている。
 
この車のヘッドライトは明るいが光束がまとまり過ぎて却って上向きにすると全体的に暗いを受ける。
この車に関して最も不調に感じたのはチエンジシフト機構であろう。まずニュートラルランプが気紛れにしか点灯してくれず交差点でもたついたことが幾度もあった
 パワーがあるからセカンドからでも走り出してくれるから不便はないが、このような事態に至るとロータリー式でなくエンドタイプのシフト機能の便利良さが痛切に感じられるし、このクラスの車に乗る人に却って使い易いのではないでしょうか。それに市街地ではサードで走行している機会の方が多くそれだけに的確なシフトインジケーターランプが欲しいところである。
 
私も同感である。ライラックR92STのチエンジシフトの扱いにくさは、構造上の問題と感じている。文中では、ロータリー式とあるが、エンドタイプになっている。ニュートラルとサアードの時にランプを点灯させているが、出来ればトップも巣へ手のシフト位置も点灯すればもっと使いよくなると感じる。メーター内のランプとミッションカバーにつくシフタースイッチの接点を増設させれば、シフトミスを防げイライラも解消しもっと簡単に使いよさが増せれる。残念なことにメーカーの最終モデルだけに、その後の改良が出来なかった事が悔やまれる。一度自分で試みたい。

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